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【最新版】国内フェアトレード市場規模の推移

10年で倍増。フェアトレード国内市場が堅調に推移持続可能性に注目が集まり、気候変動等による価格上昇を受ける中で一人当たりの年間購入額も100円増加

フェアトレード市場規模は2024年、215億円

産品別の市場規模~コーヒー、カカオが牽引。紅茶やハーブ・スパイスも増加~

 日本のフェアトレード市場の大半を占めるのは食品であり、最新の2024年のデータにおいても、コーヒーが全体の78.2%を占める主要製品となっています。次いでカカオ製品が12.2%を占め、市場を牽引しています。フェアトレードコーヒーは、大手外食チェーンによる取扱中止の影響で外食市場での伸び悩みが見られたものの、家庭用製品の販売が好調であったため、2024年度全体では前年比97%と微減にとどまりました。一方で、カカオ製品は前年比169%と大幅な成長を記録しました。これは、輸入製品の売上増加に加え、国内の大手小売企業によるフェアトレード製品(主にプライベートブランド)の取扱強化に伴い増加した結果と推測されます。また、紅茶は前年比160%、ハーブ・スパイスは前年比109%と、いずれも着実に市場が拡大しています。

気候変動で絶滅や半減が危惧される日常の食

 市場価格の高騰にもかかわらず、生産者である農家の収益向上には必ずしも結びついていない現状があります。多くの農家は気候変動に起因する異常気象により収穫量が著しく減少すると同時に、労働力確保、原材料調達、物流コストの上昇に直面しています。さらに、森林保全や人権・環境保護に関する規制強化等により、経営・管理コストの負担も増大。そのため、価格が上昇しても農家全体の収入は低いままの状況が続いています。

 また、気候変動の影響で、2050年にはコーヒーの栽培地が50%に半減(アラビカ種)し、カカオの木は西アフリカで生育が難しくなると予想されています。また、バナナは病気で絶滅するリスクがあるほか、オレンジジュースやワイン、アボカドなど日常で親しみのある産品の多くが栽培・生産の危機の直面しています。その対策の一つとして注目されているのがフェアトレードです。持続可能な開発目標(SDGs)の全項目に寄与するとされ、消費者の日常的な選択で社会・環境改善に貢献できる最も身近な対策・アクションの一つです。従来、フェアトレードは「人権問題の解決手段」や「開発途上国支援」という印象が主流でしたが、気候変動対策としての機能については十分に認知されていません。

しかしながら、フェアトレードによって生産者に還元される資金が異常気象に適応するための農業トレーニングや資材への投資、グリーンエネルギー導入等の環境保全施策に活用されることで、気候変動対策としても重要な役割を果たしています。

今後、私たちの日常の食を守っていくための選択肢としても、ますますその価値が高まっています。

 市場拡大の背景には、直近の政府・産業界におけるサプライチェーン上の人権への配慮を求める動きの急速な活発化が挙げられます。日本政府は2022年9月に人権尊重に関するガイドラインを発行し、2023年4月には公共事業・調達に参加する企業へ人権配慮を求める方針を発表するなど、政府として企業に人権対応を求める動きが強まっています。特に食品業界は人権リスクの高い原料も多く、2023年12月に農林水産省が「食品企業向け人権尊重の取組のための手引き」を発表する等、取組が進展しています。

 欧州では人権・環境デューディリジェンスを義務化する規則も企業のサプライチェーンの中で、開発途上国の原料生産地は特に人権リスクが高い傾向があるとされ、そのリスクに取り組むための数少ないツールとして国際フェアトレード認証への産業界の注目が高まっています

 国内におけるSDGs(国連持続可能な開発目標)の認知や報道の急上昇(電通「SDGsに関する生活者調査」によると2023年にSDGs認知率は9割を突破)により、消費者にとって日常生活における社会貢献がより身近となったことで、消費者からのフェアトレード商品へのニーズが拡大していることが言えます。小売主要大手各社はサステナビリティ戦略に力を入れ、プライベートブランドでのフェアトレード商品化や品揃えの拡充を進めています。また人権問題に加えて、気候変動を含む環境問題など幅広い課題にアプローチできることもフェアトレードを導入する背景と推測されます。(以上、NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン プレスリリース2025年5月1日より引用)

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